NHK WORLDでバイオ炭が取り上げられました

2022 年2月19日に放送され、オンデマンド配信中のNHK WORLDの ”Carbon Farming: A Climate Solution Under Our Feet” でバイオ炭が取り上げられました。このページではこの放送を和訳し、作成しています。

世界的なバイオ炭の脚光 (38 : 14~ 39 : 19)

2015年のパリ気候会議で土壌が一躍脚光を浴び、フランス政府は炭素排出量削減のための計画として4/1000イニシアチブを提唱しました。この目標の達成のために木や竹といったバイオマスから作られるバイオ炭という昔から使われてきた素材に注目が集まっています。

農場でのバイオ炭の活用(39 : 19~44 : 06)

果物問屋を営む雨宮氏は、15年前から梅や柿を栽培しており、畑の土壌改良のためにバイオ炭を活用しています。雨宮氏は耕作放棄された果樹園を借り受け、栽培できなくなった木をバイオ炭にして畑にすぎ込んでいます。


バイオ炭を使うことで得られる土壌改良への効果には次のようなものがあります。

  • 根の伸びが良くなる

  • 土が柔らかくなる

  • 保水性や肥料持ちが良くなる

  • 大気中の炭素を土壌に取り込み100年から1万年もの間土壌に固定することができる

  • 大気中の炭素を地中に閉じ込め土壌の再生に貢献することができる

  • 炭の多孔質性が水を蓄え、排水する能力が優れている。

山梨県の取り組み(43 : 19~43 : 42)

県の約8割が森林を占める山梨県ではさまざまな取り組みが行われています。

山梨県では1へクタルーの土壌に少なくとも1トンの炭素を固定することで地元農産物を「やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度に認定しています。

撮影:立命館カーボンマイナスPJ

南部町 バイオマス発電(44 : 06 ~ 45 : 42)

間伐材を利用して運営されるバイオマス発電所が運営されており、そこでは、地産地消のエネルギーの活用を目指しています。副産物として得られるバイオ炭は当初は産業廃棄物だったが、今ではバイオタンを肥料や牛舎の敷料にするといったプロジェクトを進めており、バイオ炭の有効活用がなされています。

このような活動により、バイオ炭や肥料は酪農家に新たな副収入をもたらす可能性があり、今やバイオ炭が地域の循環型経済を生み出していると言えます。

提供:南部町バイオマスエナジー

日本のバイオ炭に対する活動(45 : 42~ 46 : 15)

日本はJ-クレジット制度の一環として、バイオ炭をカーボンオフセットのクレジットとして初めて認定をしています。このクレジットでは国内外の炭素取引所市場で取引することが可能で、農家は大気中から取り除いた分の炭素をクレジットとしてオフセットを希望する企業へと販売することができます。

農研機構 岸本文紅先生のコメント(46 : 15 : ~ 47 : 08)

 「現在日本のバイオ炭の投入によって、固定されるCO2の量が年間5000tぐらいです。今日本では、1トンCO2で2000円くらいでまだまだ低いのですが、それが将来的にクレジットの値段が上がってくるとより取り組む農家さんの収益になります。世界でどのくらいポテンシャルあるかは、それもレンジがあるんですが、0.3から2ギガトンのCO2の削減ポテンシャルがあると言われてます。」

撮影:立命館カーボンマイナスPJ

 「IPCCの報告によれば土壌に貯蔵・隔離できるCO2は、潜在的に2050年までに年間2.3ギガトン以上と推定されています。炭素農業の可能性を私たちが高めることによって未来に向けた新たな潮流が生まれることが期待できます。世界には80億人近い人々がいますが、私たちがどのように食べ物を育て、何を食べ、どのような選択をするかによって、私たちと地球の未来が形作られていくのです。」