本ページでは地域の企業や行政が連携して、バイオ炭による環境対策及び地域活性化の取り組みを行う事例をご紹介します。和歌山県みなべ町では、特産物として有名な梅の剪定枝をバイオ炭化事業に用いることで持続可能な循環型農業の仕組みを目指しています。
梅の剪定枝によるバイオ炭化事業
梅の剪定枝をバイオ炭化し、製造されたバイオ炭を農地施用することで大気中の二酸化炭素を削減できるとともに環境保全型農業の実現が可能になります。バイオ炭化を通じてJ-クレジットを活用し、理想的な循環システムを構築します。
みなべ梅wo炭クラブとは
梅の剪定枝をバイオ炭化し畑へ施用することにより、下記事項を実現して世界農業遺産産認定地に相応しい持続可能な循環型農業を構築することを目的とする。
1)合法的な剪定枝の処分(野焼きや不法投棄からの脱却)
2)ゼロエミッションの実現
3)脱炭素、地球温暖化への貢献(CO2 を炭として土壌に貯留)
4)土壌改良(微生物を増やし、通気性を良くし、保肥力・保水力を高める)
5)J-クレジットを活用した事業
6)町のイメージ向上
(出所:みなべ梅wo炭クラブ規約)
みなべ町議会議員・みなべ梅wo炭クラブ代表
真造賢二さん
真造さんはみなべ町議会議員、みなべ梅wo炭クラブ代表として、梅の剪定枝をバイオ炭化し、理想的な循環型の農業を確立することを目指しています。「あがらの町をあがらでなんとかしよう」というスローガンをもとに、地域の方々の代弁者となって、より良い町にしたいという思いを持って、活動されています。
みなべ町について教えてください
みなべ町は梅の生産量が日本全国の約3割であり、「日本一の産地」と言われています。人口の約7割が梅に従事し、役場の中には日本で唯一「梅科」が存在します。1950年にみなべ町で開発された梅ブランドの南高梅は果肉が大きく、梅ジュースや梅酒、梅干しに用いられ、オールマイティーな梅として絶大な人気を誇っています。2015年には南部町での梅の農法が世界的な価値を持つ農法であるとして、みなべ・田辺の梅システムが世界農業遺産に認定されました。
みなべ梅wo炭クラブのリーダーとしてどのような思いで設立されましたか?
これまで、梅栽培からたくさん創出される剪定枝の処理は大変で大きな問題でした。
しかし、剪定枝をバイオ炭化し農地に施用すれば剪定枝の問題を解決できるだけでなく、土壌改良剤としても効果も期待でき、理想的な循環型農業を確立できる機会であると考えました。持続可能な農業を続けていくことは世界農業遺産としての責任であると思います。
バイオ炭は持続可能な社会にどのように貢献できるとお考えですか
梅の剪定枝をバイオ炭化することで大気中の二酸化炭素の削減に貢献することが可能です。そのため、政府の宣言するカーボンニュートラルに近づくことができると考えます。また、バイオ炭は土壌改良剤としても有効的であることから肥料の削減による安全な食の提供に貢献できると考えています。
どのようにしてみなべの梅に付加価値をつけようとお考えですか
梅の剪定枝を原料としたバイオ炭を梅農地に施用することで「環境にやさしい梅」であることを消費者に訴えることができると思います。そのために認証制度を設け、シールの付与などを行うことで消費の拡大につながるのではないかと考えています。
みなべ梅wo炭クラブを発足した手応えを教えてください
バイオ炭についての勉強会などを開催する中で、梅の農家さんたちから剪定枝の問題解決につながる有効的な手段だと受け入れられ、「早く実現してほしい」などと応援の声が多くあります。
バイオ炭の活動に関心を持ってもらうために行なっている広報活動について教えてください
多くの機会を設け、発信していくことが必要だと思います。今回の活動では、町議会での問題提起や農家の方達への直接的なアプローチ、地元メディアでの広報活動などを行いました。特にメディアを用いて、活動に対する認知度を高めることが有効的であると考えます。
みなべ町の議員であるからこそできたことを教えてください
自分が原動力になって、さまざまなことを推進していける環境にあったことが一番の良さであったと思います。町長に直接バイオ炭の件を問題提起できたことに加え、立命館大学日本バイオ炭研究センターや和歌山県との繋がりを持ち、全面的な協力を得ることができました。
今後についてお聞かせください
梅の剪定枝のバイオ炭化を事業化するのが目標です。
農家が剪定枝をある拠点に持ち込み、そこで製造したバイオ炭を農家に還元するシステム作りを行うことで理想的な循環型社会を目指します。みなべ町の梅栽培が持続可能な農業としての価値をさらに高め、「カーボンニュートラルに貢献する町」「SDGsを推進する町」として、世の中に認知されていきたいと考えています。
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みなべ町議会議員
棒引清さん
棒引さんは30年ほど前に地域の林業研究会に参加し、梅の剪定枝を原料とした炭を土壌改良剤として活用する取組みをされた経験をお持ちです。過去に行った間伐材の炭化事業が現在の梅の剪定枝の炭化事業につながっています。
林業研究会でなぜ梅の剪定枝の炭化に取り組みましたか。
みなべ町として合併する以前の南部川村は「梅と炭の村」と言われており、「紀州備長炭」として炭が元々産業としてあった地域でした。
梅栽培に際して発生する剪定枝の処理が問題視されていたため、梅の剪定枝を炭化することで循環型農業の確立が可能であると考えました。それは、梅栽培に適している中性質で水はけの良い土壌づくりに土壌改良効果のある炭が最適であったためです。
その際に得られた効果や発見を教えてください。
不完全燃焼の炭は土壌に悪影響を与え、モンパ病などを引き起こす可能性があるということがわかりました。
その際に難しかったことを教えてください。
製炭作業を個人責任で行なっていたため、農作業との両立が非常に困難でした。また、製炭時に発生する煙が梅の農地で充満し、地域住民への被害を招いた経験があります。非常に難しい取り組みでした。
消し炭の畑への施用について教えてください。
窯で製造した炭は新植、改植時に土に打ち込んで施用していましたが、現在の消し炭は安全性の面から畑の表土に撒いて施用しています。
バイオ炭を用いたみなべ町の地域活性化への思いを教えてください。
「脱炭素、地球温暖化防止に取り組む町」として、認知度を上げていきたいです。特に炭化作業における仕組み作りについて考えるべきだと思います。
みなべ梅wo炭クラブにどのような思いで参加されましたか。
梅の剪定枝を炭にして農地に施用することは以前から行なっていたため、バイオ炭という形で土壌に貯留することで大気中の二酸化炭素を削減できるというお話に興味を持ち、参加しました。
町議会議員としての今後の展望について教えてください。
より良いみなべ町となるように日々変化する情勢に合わせて学習し、オールラウンドに対応できるよう取り組んでいきたいです。
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