生産サイドの事例

株式会社南部町バイオマスエナジー 

 本ページでは、地域の企業や行政連携し、バイオ炭による環境対策及び地域活性化の取り組みを行う事例をご紹介します。インタビューに伺ったのは、株式会社南部町バイオマスエナジーです。同社は山梨県南部町の木質バイオマスガス化発電所で、バイオ炭の生成や活用の普及を行っています。

株式会社南部町バイオマスエナジーとは

 株式会社長大・株式会社日本トランクバスター ・合同会社南部Green Energyの3社から構成される企業で、公民連携事業パートナーである山梨県南部町と「公民連携木質バイオマスガス化事業」の取り組みを進めています 。

 本事業では、豊かな森林資源を有する南部町及び近隣地域から間伐材由来の木質バイオマス資源を調達し、南部町内のスポーツセンターの敷地内に建設した木質バイオマスガス化発電所(熱分解方式)で発電事業を行っています。 発電した電気は固定価格買取制度(FIT)を利用し、株式会社東京電力パワーグリッド社へ供給しています。

 また、発電工程で得られる排熱はスポーツセンター内の温水プールの保温用熱源、並びに間伐材由来の木質チップの乾燥用熱源として発電所内で利活用されています。さらに、発電工程ではバイオ炭も副産物として生成されるため、水田や農地、果樹園等に向けてバイオ炭の供給を行っています

 公民連携の視点として、適正な間伐の促進による健全な森林環境の維持 、地域林業の活性化、新たな関連事業の創出、雇用機会の創出等が挙げられます。またスポーツセンターは南部町最大の防災拠点であることから、災害時には発電所から電気を送電する「非常用電源」の仕組みも取り入れています。

(出所:内閣府 地方創生SDGs官民連携事例

(出株式会社南部町バイオマスエナジー

▼インタビューいただいた方のご紹介▼

株式会社長大 事業推進本部 国内営業企画部 課長 

株式会社南部町バイオマスエナジー 竹下 光雄さん

 竹下さんは、今回訪問した山梨県南部町の木質バイオマスガス化発電所の立ち上げに携わられました。現在は、発電所の運営のみならず、地域の酪農家や果樹園にむけてバイオ炭の普及活動なども行われています。

貴社のバイオマス事業が始まった経緯について教えてください。


 この木質バイオマスガス化発電設備の計画は2016年から始まりました。そして2021年6月に竣工し、今に至ってます。

 南部町さんと公民連携の事業として、この峡南地域(南部・身延・富士川・早川町)の間伐材を利用して、その燃料(木材)で何か環境に貢献できることはないかと考え、この発電所を建設しました。


本事業は3社の共同出資ですが、その役割分担や協力内容について教えてください。


 この発電所の一番のコンセプトとして公民連携というのがあって、平時には隣接するスポーツセンターの温水プールへ排熱を、災害時には南部町指定防災拠点となっている体育館へ電気を供給します。

 そしてこの株式会社南部町バイオマスエナジーという会社は、事業主体として株式会社長大が立ち、日本トランクバスター社がこの発電設備の調達、納品、立ち上げを行いました。バイオマス燃料は南部グリーンエナジー社が調達し、我々が依頼したチップの形にして納品をしていただいています。そういう意味では、民間企業と町と皆で連携したバイオマス発電所です

バイオ炭の生成を始めた経緯について教えてください。


 この施設はガス化発電施設といいまして、木質チップからガスを作り出しそれを電気エネルギーに変えて送電しています。この発電プロセスの中でバイオ炭が生成されてきます。どちらかといえばバイオ炭を生成するというより、木質チップの副産物としてバイオ炭が生成されているというふうに我々は認識しています。


どのような設備で発電や炭の生成を行っているのですか?

 

 バイオマス発電所には2種類の方式があります。一つは直接燃焼方式、もう一つは熱分解方式です。

 直接燃焼方式は、約1300℃の高温の炉の中で木質チップを燃やすため、が排出されます

 一方、熱分解方式は、だいたい炉内の温度が900〜1000℃となりますので、 灰ではなくバイオ炭が排出されます。我々はそれを狙って有効活用しようと、こちらの設備にしました。それと、熱分解方式のメリットは、小規模な施設で運営できる点です。我々は人口が少ない町でも運営できるように、この熱分解方式に決定しました。


生成したバイオ炭をどのように活用していますか?


 活用の1つは、南部町のとなりにある朝霧高原という、有名な酪農地です。乳牛の敷料には、おがくずを使うのですが、そこにバイオ炭を混ぜて使っていただいています。消臭、蓄熱など牛にとって過ごしやすい環境が生まれます。また牛は、寝るとき乳頭炎などの病気になりやすいんですが、バイオ炭入りの敷料にそれらを抑制する効果がないか、酪農家さんと検証に取り組んでいます。その後、敷料を回収してたい肥工場に送り、それをバイオ炭の混ぜた牛糞たい肥などに変え、果樹園等に流通させていこうと計画しています。

今後、他の地域で同様の取り組みを行うために留意すべき点があれば教えてください。


 バイオマス発電所単体という小さい視点でビジネスを考えるとやはり行き詰まってしまいますビジネスというのは、入口出口があります。ここで森林資源(間伐材)チップ化納品が入口で出口には電気・熱・バイオ炭があります。それをどう循環させるかという課題にどうしても直面するんです。

 私はこの発電所を資源循環・資金循環工場だと言っています。資源が回れば資金が回るそういう一つの仕組みでありたいなと思うからです。そうなるとローカルSGDsに貢献する1つの手法になるのではないかということで、このビジネスには力を入れています。そういう意味では南部町の次の地域にこの仕組みを導入するのであれば、そこまで考えてやった方がいいと思います。

インタビューを終えての学生の感想

 環境対策や地域活性化などを含めたローカルSDGs実現に向けた手段の1つとして、バイオマス発電所でのバイオ炭の取り組みがあることを知れました。ビジネスという視点では、出口戦略等の十分な検討の重要性を感じました。バイオ炭の排出される熱分解方式の発電所は小規模で、様々な地域で運営ができると思うので、今後の広まりに期待したいです!

竹下さん、インタビューに協力をいただいた皆さん、ありがとうございました!

(※撮影時のみマスクを外しております。)

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