生産サイドの事例

~島津製作所、アオヤマエコシステム~

株式会社島津製作所、株式会社アオヤマエコシステムへのインタビューをもとに、廃棄物活用に取り組む企業の先進的な事例をご紹介します。なお、現在はこの取り組みを中止している。

企業概要

島津製作所

明治8年創業。京都に本社を置き「人の健康」「安心・安全な社会」「産業の発展」の事業領域でサービスを創出。


島津製作所 瀬田事業所

島津製作所の中の4つのセグメント(分析機器、医療機器、航空機器、産業機器)の内、産業機器セグメントを主に集約している。

アオヤマエコシステム

昭和51年創業。主に産業設備洗浄とパレットリサイクルの二つの事業を滋賀県で営んでいる。

廃棄物活用の概

 島津製作所内で発生した梱包材の木くず等を集積・分別し、アオヤマエコシステムに運搬されます。運搬された木くずは破砕しチップ状にされた後、炭化、製品化、土壌改良剤にされ、地域貢献利用等に利用されます。また、島津製作所では炭化された土壌改良剤を、社内緑地、京都府の植物園や京都市内の農園、瀬戸内オリーブなどに利用しています。詳しくは、以下でご紹介していきます。

▼インタビューにご協力いただいた方々▼


島津製作所 三ツ松 昭彦さん

島津製作所、環境経営統括室マネージャー



島津製作所・瀬田事業所 岡田 健一さん

瀬田事業所、総務グループ課長



島津製作所・瀬田事業所 西山 和伸さん

瀬田事業所、総務グループ 施設管理チーム リーダー




アオヤマエコシステム 青山 敦さん

株式会社アオヤマエコシステム2代目、代表取締役

島津製作所

株式会社島津製作所 瀬田事業所

自社の事業で発生した廃材を炭化し、土壌改良剤として再利用する

どのような活動をされているのか教えてください。


 三ツ松さん:島津製作所では、自社の事業で発生した廃材を炭にして、土壌改良材として再利用するという取り組みを進めており、自社の本社工場の緑地帯、瀬戸内のオリーブ園(*NPO瀬戸内オリーブ基金への寄付活動)等で採用されています。最近では、京都市内の農園(*中嶋農園)の取り組みもスタートしています。

 *NPO法人瀬戸内オリーブ基金とは、瀬戸内の自然を守ること、再生することを目的に活動されています。基金はオリーブの植樹や栽培をはじめ、環境教育活動や環境保全・再生に関する活動を実施する団体や個人への助成にも充てられています。

 島津製作所では、2016年度から瀬戸内オリーブ基金への寄付活動を継続しています。オフィスや工場から排出された古紙を再生して作ったオリジナルノートを寄付する活動や、 同基金が運営する島内5箇所のオリーブ畑へ廃材から出来た土壌改良剤を散布する活動をしています(出所:島津グループの廃棄物管理)。

散布の様子

土壌改良炭が散布されたオリーブ畑

 京都市内にある中嶋農園へ土壌改良剤を散布する取り組みをしています。中嶋農園は、京都市の南部でお米やサニーレタス、キャベツ、黒枝豆等を栽培している農業法人です。次の世代に繋がる農業をしていくことを使命とし、人材育成、環境改良にも取り組まれています。中嶋農園の中嶋直己さんは、島津製作所の取り組みを知り、一緒に連携して取り組みたいと思いこの活動を開始されました

運ばれてきた炭

中嶋農園

土壌改良剤として散布された炭

ー瀬田事業所は、会社の中でどのような役割を担っているのかを教えてください。

 岡田さん:瀬田事業所は、島津製作所の中の4つのセグメント、分析機器セグメント、医療機器セグメント、航空機器セグメント、産業機器セグメントの、4つ目(産業機器セグメント)を主に集約している工場です。BtoBのビジネスなので、扱ってる製品も比較的大型で、入荷される大型部品を梱包してる木くずなども、それなりの量があります。したがって、これらの廃棄物の処理については付加価値をつけたような環境負担を下げる取り組みを常に課題としております。



ー具体的なオペレーションについてお聞かせください。

 西山さん:この事業所の各部署から出る木くずが集積所に集まります。そのときに分別が入ります。そして業者さんの方で収集、破砕、そして最終的に炭化処理というような工程を経て、炭製品になります。


ーアオヤマエコシステムさんとの関わりについてについて教えてください。

 三ツ松さん:当社としてはフリーハンドで新しい技術、なおかつより環境に優しい廃棄処理技術というものを求めていました。従来は単に燃やすといった、あまり環境価値の高くない処理をしていたんですね。しかし、炭にすることで土壌改良ができるということで、当社としても非常に魅力に感じ、アオヤマエコシステムさんとの取引を始めました。



木くずのリサイクル量、それにかかるコストなどについてお聞かせいただけますか。

 西山さん:4月から12月までの8ヶ月間で、木くずが約61t出ています。そのうちアオヤマエコシステムさんに炭化処理をお願いしているのは約半分の30t余りとなっていまして、2020年度で約48t、2019年で45t、2018年で約52tというような排出量となっています。当然、排出量に見合うだけのコストがかかっていまして、毎年200万円から260万円ぐらいの処理費用がかかっているのが実態です。

情報を常にアップデート・一に分別・Win-Winの関係で取り組む

ー廃棄物を活用する際に必要なこと、工夫されていることについて教えてください。

 三ツ松さん:まず当社の考え方としては、やはり捨てたものを再利用していく事で、無価値なゴミを減らしていきたいという思いがあります。そのためには、新しい廃棄物の処理技術、そういった情報を常にアップデートしていかなければいけません。

 当社には、約2ヶ月に1社ぐらい新しい業者さんの紹介がありますが、必ずお話を聞くことにしています。そこで当社の課題に合致していて、かつ新しい技術をどんどん取り入れようとしています。今回の炭なんかはその代表例ですが、新しい情報の蓄積をどんどんしていっていることが一つの工夫だと思います。



 西山さん:ゴミ・廃棄物と言ってますけども、まず分別しないと、再資源化が進みません。昨今、各ご家庭でも分別の意識は高いのですが、この事業所でもまずは「一に分別」ということを僕の中では非常に気を使ってます。中にいろんな大型のボルトなどが入っていますと、(炭化処理を)お願いしているところで機械の破損や、最終的に炭製品になったときに商品価値が下がることがあります。したがって、一番分別に気を使っていますね。



ー加えて、木くずの成分について工夫点があれば教えてください。

 三ツ松さん:木くずの処理、炭にするということ自体は外部の業者様にお願いしておりますが、先方との取引条件では木製のもの以外の物、異物を入れないという契約内容になっているんですね。例えば接着剤や、合板とか塗料は異物となります。それらは、炭化する段階で有害物質が発生する懸念があるので、受け入れ条件として省くことになっており、当社としてはその契約内容に則ったもののみ、お納めしています。契約前に炭の分析データ、例えば有害な重金属の含有量などのデータにより安全性を確認しまして、これであれば問題ないということで契約をしています。


サプライヤーや地域との連携を図ることで環境貢献の幅を広げられていますが、連携される際に心がけていることについて教えてください。

 三ツ松さん:当社単独で環境活動をしてます。これは当然必要なんですけれども、それだけですとなかなか規模が広がりません。やはり環境というのは地球規模の課題ですので、できるだけ範囲を広げて活動したいと考えます。そうした思いというのは実はサプライヤーさんであったり、連携している地域の皆様方も同じ考えですね。したがって、そうした方々とまずは理念を共有して進めるということを重視しています。

 あとは、どうしても島津がサプライヤーさんにとっては顧客の立場になるので、決してこうしてくださいというスタンスではなく、win-winの関係で一緒にやっていきましょうと、お互いメリットになるようなことをやっていきましょうと、そのような姿勢や説明を心がけています。

廃棄物は資源である

ー御社の今後の活動について、お聞かせください。

 三ツ松さん:元々資源循環というものを進めるために、木材を単純に燃やすのではなく、炭にして利用しています。ただ今回のように炭のもつ炭素の固定効果という視点で、活動を評価していませんでした。今後は、今までの循環型社会への貢献や、土壌改良などによる生物多様性への貢献、それ以外に気候変動問題などに対して、本活動がどの程度効果があるのか。例えばLCAの評価をするとか。そうした形で評価の軸を広げていって、取り組みそのものも広げていければと考えております。


ーその他、活動されている中でお気づきになられた点があれば教えてください。

 西山さん:廃棄物のいろんな再資源化の取り組みをしていく中で、世の中でSDGsとか、カーボンオフセットと言われていますが、地球規模でそんな大層なことはできませんけど、やはり当社としてもできること、環境貢献を進めていきたいなと思っています。これは多分、地球がある限り絶えることはないんじゃないかと考えています。



ーそれでは最後に、環境負荷低減活動に興味がある方々に向けて、メッセージがあればお願いいたします。

 三ツ松さん:やはり、まず「少なくできないか」が重傷です。もう一つは、廃棄物を「資源である」という考え方に変えていくことが必要だと思います。資源として考えてみると、どういったものに使えるのか、幅広く考えることができるのかなと。当社の取り組みもその一つだと思いますが、同じように賛同していただける企業さんがいらっしゃれば、どんどんやっていただきたいなと思います。

アオヤマエコシステム

株式会社アオヤマエコシステム 炭化リサイクルセンター

ー創業の思いについて教えてください。

 青山さん:今の企業理念が「隠れた才能を引き出しみんなで力を合わせて共に幸せになる未来を創ろう」ということを掲げていまして、その前は「隠れた才能を引き出しみんなで力を合わせて人間が住みやすい環境を作ろう」という企業理念を掲げておりました。そこにはやはり先代の環境に対する思いや社会に対しての貢献の思いが込められていました。


ー社名の由来について教えてください。

 青山さん:当社は元々PCGエンジニアリングという社名でして、最初は産業設備洗浄というエンジニアリングを主な事業としてやっていました。平成16年に環境事業に関わらせていただくにあたって、エンジニアリングという社名よりは、もう少し環境会社という意味合いを持った社名に変えた方がいいのではないかということで、私の先代の社長が当時お付き合いがあった大学の教授の助言もあり、アオヤマエコシステムとなりました。

廃棄物を買い取り、炭化するシステムを構築 

ーパレットリサイクル事業にて廃棄物のリサイクルをされていますが、具体的にどのようなサービスをされていますか。


 青山さん:主な流れとして、廃棄物である木くずを炭化の原料として企業様から買い入れをし、それを我々の方で加工し、二次製品を企業様にご購入いただくというという流れになっています。したがって、廃棄物として木くずを扱わないことによって、廃棄物の減量になります。

 あと、二次製品を製造するにあたって、木くずを燃やすのではなくて炭素を固定するという部分で、CO2の削減ということに取り組むビジネスモデルです。



ーパレットリサイクル事業を始めるに至ったきっかけや背景を教えてください。


 青山さん:そもそもこの事業は、私の先代が始められました。元々、企業様の課題を洗浄技術等によって解決するという産業設備洗浄というエンジニアリング事業をやっていました。その頃、物の運送に使われた木質廃棄物というのは、一般廃棄物という取り扱いになっていて、自治体が処分するものでしたが、やはり企業さんとしてはそれを産業廃棄物として処分していた背景がありました。そうすると、一般廃棄物を産業廃棄物として処分することとなり、それは問題があるということで、もう少し違った処分方法はないだろうかというふうに、先代が企業の担当の方から相談を受けられました。そこで考え出したのが今のこのパレットリサイクルです。廃棄物として扱わない仕組みを作ったのが「廃パレットリサイクルシステム」という形になります。

炭化を行う

炭化炉

破砕され、チップ状にされた木くず

出来上がった炭

二次製品の開発

ーパレットリサイクル事業を行うにあたっての課題点を教えてください。


 青山さん:やはりどの企業様も日々の木質廃棄物の処分には困られていますが、それを我々のシステムに載せた後に、さらにその出先の炭の需要については、なかなか難しい部分があります。炭単体ですと土壌改良材なんかでとても需要があるんですけども、一般の方が使われるような、二次製品の種類がなかなか生みだせていません。レパートリーを増やすことが、これからの課題の1つかなと考えております。



ー解決案はございますか?

 青山さん:炭という日頃馴染みがないものを普及させていくには、一般の方々に馴染むような用途が必要なんじゃないかと思います。例えばこの「すみ花ちゃん」という製品ですと、これは炭を成型したものに、木花の延命剤として使います。水の腐食を防ぐような成分を浸透させて、花瓶の花が長持ちするように使用いただく商品です。また炭の粉を混ぜた石鹸「炭玉せっけん」等を開発しております。

すみ花ちゃん

炭玉せっけん

ー炭化リサイクルシステムについて工夫されている点や、大切にされていることなどを教えてください。

 青山さん:連続炭化炉というもので連続して炭を作っており、全自動システムになっています。原料を投入すれば炭になって出てくるというものです。そこには何点か重要な管理ポイントがありまして、例えば、温度のポイントでも4~5つぐらいあります。空気量の調整、原料のチップの含水量などを一番良いレベルにしないと、良い炭が出てきません。この部分は、長年携わってきて、はじめて良い炭が作れるというものではないかと思っております。

ご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました!